ミュージアム・メモリーズ

訪れた博物館の感想など

紙の博物館(東京都北区)・「紙で旅するニッポン~四国編~」展感想

紙の博物館(東京都北区) 「紙で旅するニッポン~四国編~」展感想

 

☆紙の博物館について

 はじめて訪れました。飛鳥山公園には北区飛鳥山博物館、渋沢史料館、そして紙の博物館と三つの博物館があり、共通観覧券(720円)もあるようです。展示室は2階から4階にあり、2階は現代の製紙業についての展示、3階は子ども向けにアレンジした紙についての展示、4階は紙にまつわる歴史の展示と企画展示室となっており、事前に想像していたよりも見応えがありました。

☆常設展について

 2階の現代の製紙業についての展示は、紙をつくる仕組みや機械、紙の種類や実際にどのような形で紙が使われているのかについて説明されていて、普段当たり前に使っている「紙」というものを、意識化することができて興味深い内容でした。たとえば、紙の機能として、「記録する」、「包む」、「ふきとる」などが挙げられていましたが、当たり前に存在し利用しているそれらを「紙」というカテゴリーでまとめて把握することはなかなかない気がします。また、古紙の利用率が六割を超えていることやリサイクルについて触れた展示もあり、製紙業界の取り組みの普及・啓発的な役割を担う企業ミュージアム的な要素も含んでいるようです。実際、館のウェブページには製紙業に関わる企業の協力によって運営されていることや常駐している解説ボランティアは製紙会社に勤務していた方であることが書かれていました。

 4階の歴史展示は時間の都合で足早にみたのですが、紙にまつわる歴史が通観できる内容になっているようでじっくりと再見したいです。

 

☆「紙で旅するニッポン~四国編~」展について

 シリーズ展示として「紙で旅するニッポン」の展示を行っているようで、今回取り上げられていたのは四国。四つの県それぞれについて説明されていたのですが、愛媛、高知を中心に盛んであったことが、印象に残りました。関連する展示物とともに現代でも残る産地と共にいの町や四国中央市に紙の博物館があることも紹介されており、単なる地域の紙文化紹介で終わらずに、「旅行者」として行ってみるなら……という視点が持てたのでみていて楽しかったです。展示は楽しめたのですが、せっかく「旅する」と銘打っているのですから、旅行ガイド風に展示内容をまとめたリーフレットがあって持ち帰れたらなおよかったと思いました。

企画展は2018年3月4日(日)まで。

☆アクセス

 JR京浜東北線王子駅の南口を出て跨線橋を渡り、段丘崖をのぼると飛鳥山公園があります。博物館までは駅から徒歩5分ほど。都電荒川線飛鳥山駅にも近いです。

 

☆開館時間・料金など

開館時間:10:00~17:00
休館日:月曜日、年末年始
入館料:大人300円

南相馬市博物館(福島県南相馬市)

 
☆感想
建物や展示は比較的新しく、シアターなども付属しており、設備の充実を感じます。シアターでは震災以前の相馬の姿を知ることができる映像が30分ごとに流されていました(ただし、少々羅列的な紹介)。展示構成はオーソドックスな自然史系、人文系(原始から近現代、民俗)に加えて、野馬追が一つのスペースが設けられているのが目を引きます。野馬追についてジオラマや屏風図を通じて知ることができ、地域色がよく出ていると感じました。これはもともと野馬追の里歴史民俗資料館として1995年に開館したという経緯もあるようです。博物館のすぐそばには相馬野馬追の祭場もあり、そのスケールを体感することができます。震災や原発事故を経ても祭りや博物館を堅持していることに文化に対する気概を感じました。震災後に開催された特別展「被災地の原野に生きる -南相馬の生き物と人・暮らし-」のリーフレットが配布されており、震災後に地域博物館の果たしている役割という意味でも興味深いです(常設展示にも一部反映されているようでした)。Webページなどを見る限り近隣の地域博物館の中では一番しっかりと活動している印象がありこの地域に行くならば必見の博物館です。
 
☆交通アクセス
東京からは新幹線で福島駅に出て(1時間半)、バスで原ノ町駅へ(2時間)。原ノ町駅からタクシー(10分)。
私は18きっぷで上野から常磐線で竜田まで出て、代行バスに乗り継ぎ原ノ町駅に来ましたが、代行バスは一日二本のみなのであまり利便性が高いとはいえません(普通列車なら上野駅5:10発、特急なら7:00発※執筆時現在。常磐線は全線復旧に向けて作業中のようなのでダイヤは要確認)。また、駅からは徒歩でも住宅地を抜けて15分程でつけました。
 
☆諸情報
開館時間:9:00~16:45
休館日:月曜日
入館料:一般300円
なお、訪問時、特別展は準備中でした。
 

「世界に挑んだ7年 小田野直武と秋田蘭画」展(サントリー美術館、東京都港区) 感想

☆展覧会総評
 「小田野直武」という人の名前や「秋田蘭画」という言葉は絵にそれほど詳しくない人にとってはあまり馴染みがないかもしれません(私自身も高校日本史の近世文化史で名前だけ出てきたことを覚えているだけでした)。展覧会を見る前はかなりマイナーなテーマ(≒絵の素人にはつまらない)ではないかという予感もあったのですが、小田野直武は平賀源内に師事をして有名な「解体新書」の挿絵を担当するなど、よく知っている史実に近い人物であることがわかったり、東洋と西洋の絵が絶妙に接合されている「秋田蘭画」の世界がおもしろかったりと、なかなか楽しめる展示でした。
 
☆みどころ
 展示構成がとてもわかりやすくてがよかったです。秋田蘭画の源流となった西洋絵画と東洋絵画についてもそれぞれ一章設けられてしっかりと展示されており、それを踏まえてメインテーマである「秋田蘭画」の作品群をみることができたので、両者が絶妙に組み合わされて描かれていることがよくわかりました。「遠近法」や「陰影法」などの西洋絵画の特徴や画題などの東洋絵画の特徴についてもキャプションが丁寧につけられており、理解の手助けになります。富士山などの日本的名所や関羽像など東洋的故事に由来する画題にも関わらず、部分的に西洋画らしさを感じさせられるという体験が新鮮でした。
 
サントリー美術館には初めて訪れました。年の瀬が近づき多くの人で賑わう六本木の街とは対照的に人影がまばらな館内で静かに鑑賞することができました。ミュージアムショップは書籍コーナーは展覧会に関連する本が少々置いてある程度でした。どちらかというと高級そうな小物の販売などが多い印象。図録は2500円となかなかのお値段でしたが、図版、解説共にしっかりとしているようでした(買いませんでしたが)。入館料が1300円(一般料金)と少しお高めで気軽に入るには少しハードルが高いのが玉に瑕でしょうか。
 
☆基本情報
期間:2016年11月16日(水)~2017年1月9日(月)
開館時間:10時~18時(金・土は20時まで)
休館日:火曜日
入館料:一般1300円、大学・高校生1000円
 

印刷博物館(東京都文京区)

印刷博物館(東京都文京区) モノと向き合える場所

 

☆基本情報

アクセス・立地:東京メトロ有楽町線江戸川橋駅から少し歩きます、10分程度。飯田橋駅からでもよし。首都高速道路の向こう側に視線を向けていると一目で印刷博物館が入る凸版のビルがわかります。高架で覆われた神田川の川辺はあまり風情のある道ではありません。

 

入場料:一般料金300円、学生料金200円。

 

☆みどころ

 デザインのセンスがいいのでとても心地よい空間。まず最初のプロローグ展示では印刷文化の歴史で重要だったモノが壁面に並べられていて一望することができます。モノの名前・説明が配布のパンフレットにしか書かれていないのでいささかもどかしいですが、難しいことを考えずに想像をめぐらしてみるのは楽しいです。

 メインのスペースでは印刷の技術の紹介、印刷にまつわるモノの展示。展示物も興味深かかったですが、目をひかれたのは展示方法。木製のテーブル型の展示ケースが採用されていて間近でみれるのはうれしい。さらによかったのは解説映像が多用されていて資料の前でイスに座ってそれをみることができること。展示に集中してじっくり眺めていても疲れないのでとても快適にみることができました。「印刷」の博物館の展示でデジタル化が進んでいるのは「印刷」のこれからの方向性を示しているようでおもしろいです。

 平日の昼間に訪れたためか一般の来館者よりも、企業の研修や学校見学の下見のために団体で訪れた方が多いように感じました。館内の一角で無料ワークショップをやっているようですが、その方たちで埋まっていたので参加できず。またの機会に。

 入館料が安いのに充実した博物館。常設展の展示をきちんとまとめた図録があったらぜひほしいですね(簡易のブックレットしかなかった)。

 

www.printing-museum.org

旧新橋停車場 鉄道歴史展示室(東京都港区)

旧新橋停車場 鉄道歴史展示室(東京都港区)

 

☆基本情報

企画展:第39企画展「駅弁むかし物語 ―お弁当にお茶―」(2015年12月8日(火)~2016年3月21日(月・休))

アクセス:新橋駅から徒歩五分ほど。

入館料:無料。

立地:オフィス街の一角にある小さな博物館。駅舎が復元されています。

☆感想

施設のポイント:常設展では旧新橋停車場の遺構を間近に見ることができます。遺跡といえば土器など古代史のイメージが強いですが、それほど古くない近現代の遺跡をこういう形でみられるのはおもしろいですね。

企画展のポイント:むかしの汽車旅行の姿が思い浮かぶよい展示。凝ったデザインの駅弁の容器だけなく、現在ではペットボトルにとってかわられた汽車土瓶が渋い趣きがあってよいですね(撮影禁止だったのが残念)。注意書きで空箱空瓶を窓の外に投げ捨てないように、とあるのをみると当時のマナーのレベルが知られます。

総評:日本における鉄道はじまりの地でもあり、鉄道ファンでなくても一見の価値はあると思います。ショップといえるほどのスペースはありませんが展示図録が過去の分も含めて豊富に取り揃えられていました。

 

www.ejrcf.or.jp

 

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河鍋暁斎記念美術館(埼玉県蕨市)

河鍋暁斎記念美術館(埼玉県蕨市)

 

アクセス:JR京浜東北線西川口駅で下車、徒歩二十分。

企画展:「申年の祝い 七福神と猿」。

入館料:一般320円、学生210円。

立地:賑やかな駅前を抜け、何度か道を曲がった先の住宅街の一角にあります。

感想:個人宅を改装したようなこじんまりとした博物館で好感。暁斎について事前知識はなかったのですが、ミュージアムショップにあった美術館発行の『画鬼 暁斎読本』(63ページ、1080円)がわかりやすくまとまっていてよいです。暁斎の子孫の方が美術館の運営に関わっていて収蔵品もそれが中心となっているようです。

ポイント:画の退色を防ぐために普段は作品の前のカーテンが閉められており、観覧者が来るたびごとにあけているのが目をひきました。

kyosai-museum.jp

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